野辺の送り
ホスピスで働く人から次のような語を聞いた。

 「明日とも知れぬ末期癌のある患者が、

自らの人生の終りに臨んで最後に願うことは、

自分が何のためにこの世に生まれてきたのか、

自分は何のために生きてきたのか、

その意味をどうしても知ってから死んでいきたい」

と切実な心の内を告白されたというのである。

 思えば人はいろいろな願いを持つが、

これほど真剣な願いがあるだろうか。

これこそまさに真実の宗教の課題である。

 生まれて、生きてどこへ帰ろうとするのか、

このいのちの願いを知ろしめして、如来の悲願まします。

ー野辺の送りー花水木
能邨英士