平成八年九月ある先輩から
病気見舞いに対する礼状を受け取った。 「・・・同封のテレホン・カードは、治らないかと思ったり、 退院できるかと思ったりの毎日の中から得た歌と仏典のことばです。 皆様のご芳情に感謝しつつ、快気祝いとさせていただきます。」 と認められ、一枚のカードには、 日々賜(たま)う 命の外に 吾がものと 思ういのちの無きを知らざリ と、印刷されていた。私の目はこのカードに釘づけにされた。 自分は、今まで一度たりとも「不思議ないのちを賜った」と 心の底から思ったであろうかと問われ、 深い慚愧(ざんき)の念を覚えたのである。 |
ー野辺の送りー 能邨英士 |