本のイラストまもなく三歳になる息子から

読めとせがまれる本があります。

それがこの『やっぱりおおかみ』という絵本です。

この絵本は「おおかみはもういないと

みんなおもっていますが、ほんとうはいっぴきだけ

いきのこっていたのです」

という一節から始まります。

そのおおかみは仲間を求めて、

ウサギの国やブタの国など

自分と似た子を探し回ります。

「もしかしてシカになれたらあそこでたのしくあそぶのに・・・」

一人ぼっちのおおかみはつぶやきます。

そして、とうとう仲間がいないことを知りますが

「やっぱりおれはおおかみだもんな、

おおかみとしていきるしかないよ」

と気がついていきます。

すると不思議と気持ちが

明るくなっていくというお話です。

私はこの本を読むたびに、

昨年報道された17歳の事件を思い起こします。

特に主婦を殺害した子はマスコミによると

「人を殺す経験をしてみたかった」

と伝えられ、社会に衝撃が走りました。

しかも彼はまじめで成績優秀で

とてもいい子だったようです。

なぜそのような子が残虐な事件を

起こしてしまったのでしょう?

いろんな要因が指摘されていますが、

私はホントに「いい子」だったから

ではないかと思えてなりません。

周りに合わせて、ずっと自分を出さないようにして

生きてきたのでしょう。

それが初めて自分らしくした結果、

ゆがんだ形で爆発したのが

あの事件だったと思うのです。

しかしこの事件は彼だけの問題ではありません。

いま社会全体が会社のため、

家族のためといい人・いい親を演じ、

また子供にはいい子を強要して

お互いにストレスを抱えているのが

今日の状況ではないでしょうか。

絵本でいえば、ホントはおおかみなのに

違う自分を求めて見失っている姿でしょう。

かくいう私も長い間、目の前のことに対して

自分をごまかして生きてきました。

面倒なこと、苦しいことから目をそらし、

いわゆるプラス思考で自分と

真向かいになってきませんでした。

しかし仏法に出遇ったいま、

かえって問題をたくさん抱えることになりましたが、

少しずつ私として歩んでいるところです。

いま、隣で寝ている息子もこのおおかみのように、

いつか出遇いを探し求める日がくるでしょう。

その時は「やっぱりおおかみだもんな」

といえる世界に生きてほしいと心より願っています。


「真宗」 能邨勇樹